誰も言えなかった
根管治療の真実を
伝えたい
一般社団法人 日本歯牙保存学会
歯内療法指導医 昆 敏明
誰も言えなかった
根管治療の真実を
伝えたい
一般社団法人 日本歯牙保存学会
歯内療法指導医 昆 敏明
※ をクリックしてください
抜くしかない
治療前
治療後
主訴 | 10年前に神経を取ってセラミックをかぶせたが一か月前に腫れてきた。歯医者に行って切開して膿を出してもらった。痛みは少し落ち着いたが歯ぐきにおできが出来ていて歯がグラグラする。三日後に抜く予定になっている。 |
---|---|
施術内容 | 保存治療と外科的根管治療の併用 |
治療期間 | 3ヵ月 |
リスク・副作用 | 外科的侵襲 |
費用 | 保存治療:138,000円 外科手術:138,000円 |
割れている
治療前
治療後
主訴 | 上の歯ぐきが腫れて痛かったので歯医者に行ったが、根が割れているので抜歯と言われたが、本当かどうか見てほしい |
---|---|
施術内容 | 保存治療 |
治療期間 | 2ヵ月 |
費用 | 保存治療:138,000円 |
おできは治らない
治療前
治療後
主訴 | 右下が腫れて痛かったので受診したが、切開して膿を出して抗生剤をのんだら落ち着いたが、その後おできが出来た。これは治らないと言われた。 |
---|---|
施術内容 | 保存治療と外科的根管治療の併用 |
治療期間 | 3ヵ月 |
リスク・副作用 | 外科的侵襲 |
費用 | 保存治療:165,000円 外科手術:165,000円 骨再生医療:165,000円 |
痛くなければこのままで
治療前
治療後
主訴 | 腫れておできが出来たが、痛くなければこのままでと言われた |
---|---|
施術内容 | 保存治療と歯根穿孔部の治療 |
治療期間 | 3ヵ月 |
費用 | 保存治療:110,000円 歯根穿孔非外科的治療:33,000円 |
薬で様子をみましょう
治療前
治療後
主訴 | 左下が腫れて痛いが飲み薬で様子を見ると言われたが、痛みが引かない |
---|---|
施術内容 | 保存治療 |
治療期間 | 2ヵ月 |
費用 | 保存治療:110,000円 |
土台が外せない
治療前
治療後
主訴 | 左下が激痛でかかりつけの大学病院に行って根が化膿していると言われた。2時間かけて土台を外そうとしたが外れなくて、痛みも治まらないので診てほしい |
---|---|
施術内容 | 保存治療とパーフォレーション部の治療歯肉縁上にほぼ歯質がなかったため歯冠長延長手術 |
治療期間 | 3ヵ月 |
費用 | 保存治療:110,000円 パーフォレーションリペア:33,000円 歯冠長延長手術:110,000円 |
破折リーマーは取れない
治療前
治療後
主訴 | 神経を取ってもらって数年後腫れておできが出来たので、別の医院に受診したが金属が折れているので治らないと言われた。 |
---|---|
施術内容 | 保存治療 |
治療期間 | 2ヵ月 |
費用 | 保存治療:242,000円 破折ファイル除去:132,000円 |
レーザーを当てましょう
治療前
治療後
主訴 | 歯ぐきが腫れて治療している。レーザーを何度か当てているが腫れが治まらない |
---|---|
施術内容 | 保存治療と外科的根管治療の併用 |
治療期間 | 3ヵ月 |
リスク・副作用 | 外科的侵襲 |
費用 | 保存治療:138,000円 外科手術:138,000円 骨再生医療:165,000円 |
他院で根の治療をしているが、
痛みが引かない
治療前
治療後
主訴 | 左下の奥歯が痛くて根の治療をしているが痛みが引かない。 |
---|---|
施術内容 | 保存治療と外科的根管治療の併用 |
治療期間 | 4ヵ月 |
リスク・副作用 | 外科的侵襲 |
費用 | 保存治療:242,000円 外科手術:176,000円 骨再生医療:165,000円 |
歯周病は治らない
治療前
治療後
主訴 | 左下の奥歯が腫れて痛かったので通院していたが、歯周病は治らないと言われた。 |
---|---|
施術内容 | 保存治療 |
治療期間 | 3ヵ月 |
費用 | 保存治療:242,000円 |
埼玉県内で
昨年も高い
再生医療実績(2024年)
根管治療のセカンドオピニオンについて
他院で治療中の歯に対し、当院での診断や治療法などの相談をご希望の方は、セカンドオピニオンを受け付けております。
相談では対象の歯の状況、治療の成功率、治療方法、大まかな治療期間・費用等を説明させていただいています。
セカンドオピニオン当日は、原則治療は行っておりません。
●相談対象のかた
●相談を引き受けられない場合
セカンドオピニオンの費用について
費用:44,000円(X線写真撮影、CT撮影、ポケット検査、診断料、相談料)
セカンドオピニオンを受けられた方が当院での自費根管治療を希望される場合は、当院規定の自費根管治療の費用から相談料を差し引いた金額となります。
感染根管治療の対象となる病気には2つあります。
歯髄炎(シズイエン)と根尖性歯周炎(コンセンセイシシュウエン)です。
歯髄炎の治療を抜髄(バツズイ)といい、
根尖性歯周炎の治療を感染根管治療(カンセンコンカンチリョウ)と言います。
では、抜髄と感染根管治療とはどんな治療なのか説明していきます。
1
抜髄(バツズイ)
虫歯が進行していくと冷たいものがしみます。そのままにしておくと冷たいものだけでなく、熱いコーヒーなどでも痛みがでてきます。これが歯髄炎(シズイエン)です。
神経まで炎症が波及して、自然に治ることはありません。歯医者ではそのような場合に「神経を取る」治療を行います。この「神経を取る」治療のことを抜髄(バツズイ)と言うのです。
下の写真を見てください。この神経取れると思いますか。
本物の歯の神経の管を染めて、その走行を調べた写真です。複雑怪奇です。実際、この神経を全部きれいにとり切るのは不可能です。
患者さんは、神経を取るというと一本の糸をすーと引くと取れてくるようなイメージをお持ちのようです。私も歯科医になる前はそんなイメージを持っていましたが、神経を取る処置はまるで難攻不落の敵に立ち向かうほどの忍耐力を必要とします。大臼歯などは2時間ぐらいかかることもあります。
虫歯菌に侵された神経(歯髄)や汚染された象牙質をリーマー、Kファイル、Hファイルなどを使用して取り除いていきます。
隔壁とラバーダムを
してもらいましょう
虫歯を取った状態、このままでは唾液が入ってしまう
隔壁を作った状態、唾液の侵入がない
ラバーダムをして治療
ファイルやリーマーを使用して神経を取ります。
神経を取ったらそれで治療が終了ではありません。
その後神経があった管の中にばい菌が侵入しないように薬を詰めていきます。普通はガッタパーチャポイントと呼ばれる材料とシーラーという薬剤を併用して根管(コンカン)を封鎖します。
水色の部分がガッタパーチャポイントとシーラーです。
ガッタパーチャポイントです。この薬とシーラーを根の中に入れていきます。
抜髄は先生とあなたとの根気くらべです。患者さんもお口を開け続けるのは大変ですが、先生も大変です。 神経の走行は複雑怪奇です。根管の数も入り口も同じ歯は一つとしてありません。この神経を取る抜髄治療は、「難敵に立ち向かう意気と根気」を必要とします。
実は日本では、この抜髄治療の予後が大変悪いことはあまり知られていません。神経を取ったらもう痛くならないと患者さんは思っています。私もそう思っていました。日本の抜髄の成功率は50%もいかないというデータもあるほどです。
では失敗したらどうなるのでしょうか?
この後、感染根管治療で詳しく説明しますが、「腫れて痛い、かむと痛い、おできができる、膿が出る」といった症状が出現します。
そしてそのような症状が出て、歯医者に行くと、ほぼ抜歯となります。
本当です。いや、それを治すのが歯医者でしょと思いますが、ほぼ抜歯となります。抜歯とならなくても、治してくれないという不思議な体験をするかもしれません。
抜髄まとめ
虫歯で痛くなると抜髄をします。抜髄して神経をきれいに取った後、ガッタパーチャポイントとシーラーを根管内に入れて根管を封鎖します。ここまでが歯髄炎という病気の治療です。この後は土台を作り、型取りをして冠を被せてその歯の治療は終了です。
2
感染根管治療
(カンセンコンカンチリョウ)
これまで説明してきたように、歯の中には歯髄(シズイ)組織が入っています。いわゆる神経のことです。この神経に虫歯などで細菌感染を起こし、歯根尖まで炎症が波及した状態が、根尖性歯周炎(コンセンセイシシュウエン)です。
根尖性歯周炎に罹患した後、身体の防御反応で生じるのが歯根のう胞です。歯根のう胞は根管内の細菌が骨組織の中に侵入してくるのを防ごうとする結果あのような球形になります。
日本ではこの病気は90%以上が抜髄治療の予後不良と言われています。これは抜髄治療を苦手にしている先生が多数いることの裏返しです。そのため日本ではこの病気になるとほぼ抜歯となります(資料2参照)。
考えてみたら当然です。神経を取る治療が上手くいかなかったからできた病気です。さらに病状が進行してしまった根尖性歯周炎を治せるはずはありません。
また根尖性歯周炎は根尖に炎症やのう胞ができて、歯槽骨が溶ける病気です。ですから保存治療だけでは治せないケースが多数あります。そのようなケースでは外科手術で対応します。ですがそのような外科手術に習熟している歯科医師があまりいません。
実際のケースを
ご説明していきます
こちらのレントゲン写真を見てください。どちらかの歯医者さんで神経を取っています。根管に入れる薬は白く映ります。赤矢印部分です。一番右側が模式図ですが、青い部分が薬、根っこの先の赤点が化膿している部分です。
薬がほとんど入っていないのがわかります。黄矢印部分です。青矢印まで薬が入らないといけないのですが、全く入っていません。その結果、根っこの先が黒くなっています。膿が貯まって化膿すると黒く写ってくるのです。
よく手抜きをしたのですかと聞かれます。おそらく手抜きではありません。担当した先生はベストを尽くしたと思います。ベストを尽くしても、抜髄は大変難しいので、これが精一杯だったのでしょう。
別な歯科医院で治してもらいました。薬が根の先まで入っているのがわかります(黄矢印)。 根尖の黒い影が消失しています(赤矢印)。骨が再生すると白く写るようになります。
ガッタパーチャポイントは、理想的には歯根(シコン)の先ピッタリが良いと言われています。
しかし先ほど説明したように根管(コンカン)の形態は非常に複雑怪奇です。なので一概にピッタリが良いと限らないケースもあります。
ここでは一応、根尖(コンセン)付近が良いということにしておきましょう。
上の図にあるように神経の管に入れる薬が根尖(コンセン)まで入っていなかったり、途中までしか入っていなかったり、薬がスカスカだったりするとその空間にばい菌が繁殖して感染を起こします。
そうすると神経を取ったはずなのに、その後歯ぐきが腫れて痛くなるのです。
この根っこの病気を根尖性歯周炎というのです。そしてこの根尖性歯周炎を治すことを感染根管治療と言います。
大事な話なのでもう一度説明します。
①の写真はどちらかの歯医者さんで神経を取ってもらったレントゲン写真です。根っこの中に薬が全く入っていません。
②の模式図で青く描かれている部分が薬です。
根の先を見ると小豆ぐらいの大きさの黒い影が見えます。根の中でばい菌が繫殖し感染を起こすとこのような黒い影ができます。黒い影の部分は膿(ウミ)が貯まっています。こうなると腫れて痛みが出てくるのです。
③、④の写真はそれを治した後のレントゲン写真とその模式図です。白く映っている薬が根の先まできちんと入っているのが確認できます。そして根の先にあった黒い影が消えているのが分かります。根の先の炎症が治って、骨が再生すると白く映るのです。
実はこのケース、歯医者さんの神経を取る治療でこのような根っこの病気になってしまったのです。そこでこの患者さんは神経を取った歯医者さんではなく、別の歯医者さんに受診して、根っこの治療をして治したのです。
実はこのように歯医者さんで神経を取ってもらった後に腫れたり痛みが出たりして、トラブルになるケースはかなりの数にのぼります。そして一度そうなるとほぼ抜かれてしまう現実が待っています。
次の図を見てください。歯が抜かれてしまう3大原因を説明したものです。
1番多い原因は歯周病です。歯がグラグラになって抜けてしまう怖い病気です。
3番目は歯にヒビが入ったり、折れたりする事故です。
そして2番目が根っこの病気なのです。
医学が進んだ現代にあっても、歯周病と歯根の病気は不治の病なのです。歯周病になったり、歯の根っこが炎症を起こすとほぼ抜歯となります。大変残念なことですが、これは真実です。
当院は埼玉県にある歯科医院ですが、患者さんは県外からも来院されます。全て歯周病か歯根の相談です。飛行機で羽田から来院される患者さんもいらっしゃいます。
ですが私共では特別歯周病と根管治療に特化しているわけではありません。
歯科医師の役目はお口の中に人工物を入れる事ではなく、生涯にわたって自分の歯で過ごせるようにすることです。
治療すれば助けられる歯を抜いてインプラントや入れ歯を入れたりすることではないはずです。このことに疑問の余地はありません。そうであれば日本人の抜歯の原因の一位と二位を占めている歯周病と根管治療を行うことは何も特別なことではないという事が理解できます。
眼科医が一生自分の目で見えるように治療すること、耳鼻科医が一生自分の耳で聞こえるように治療することと同じように歯科医師も一生自分の歯で咬めるように治療すること、つまり歯を抜かないということは当たり前のことです。ですがあまりにも安易に歯を抜いてしまう現実があります。
歯科医師である私がここまで言うには
理由があります
私自身のとんでもない歯科実態験
実は私にも歯科の患者になった経験があります。
獨協大学でドイツ語を勉強していたころの話です。今から40年以上前、獨協大学の2年生の時に突然左上の歯が痛くなりました。水はしみる、お湯もしみる、何もしていなくてもズキズキする。明らかに虫歯がひどくなったんだなという状態でした。
どこの歯科医院で治療を受ければよいか悩んだ挙句ちょっと古びた歯科医院を選択したのです。待合室で待つ間、その歯医者を選んだのは失敗だったと思い始めました。なぜなら30分近く待合室で待っている間ずっと私一人だけだったのです。
最初に受付を済ませた50代過ぎの女性の方も診療室に入ってしまい待合室には私一人だけ。他の患者さんがいない=あまり上手ではないという事を連想したからです。
名前を呼ばれて診療室に入ると50代前後の歯科医師が椅子に座って待ち構えていました。先ほど受付をしてくれた女性が横に立っていて、どうもその歯科医師の奥さんのようでした。二人だけで診療しているようです。さすがにこの状況はまずいと思いました。診察台もところどころ埃がかぶっているような状態を見て、帰りたくなったのですが、いったん座って帰るとは言えるものではありません。しかも痛いのですから。そのままうまいか下手かもわからない歯科医師に麻酔を打たれ、左上の小臼歯の神経を取る処置を受けることになったのです。
幸い水がしみる痛みからは開放されました。それから数回通院し、最終的に金属のかぶせものが入りました。
ところが食事をして咬むと何か嫌な感じがするのです。ものすごく痛いというわけではないのですが、何か今までと違うのです。
そこでほかの歯科医院に相談に行くことにしました。今でいうセカンドオピニオンです。今度は近くの駅中にあった最新の設備が整った医院を選びました。もう古くて埃をかぶっているところはダメだと考えたからです。
セカンドオピニオンで行った歯科医院の歯科医師は開業したてなのか30代前半の若くてはつらつとした先生でした。オープンしたてなのかとてもきれいで感じが良い院内です。ここなら大丈夫だろうと思い、先生にこれまでの経緯を話しました。きちんと目を見て話してくださるとても好感の持てる先生です。この先生ならきっと治してくれるだろうと期待が持てました。
レントゲンを撮影し、口の中を診察した後、「レントゲンでは問題が無いようです。かみ合わせに問題があるかもしれません。本日はお口の模型をとってかみ合わせを調べます」と言われました。
後日再び尋ねると、診療台の横に私の口の模型が出来上がっていました。自分の口を外から見れる経験はそうそうあるものではありません。なので初めて自分の口の中を外から見た時の驚きはすごいものがありました。この先生なら治してくれる、そう期待させるものがありました。かみ合わせに問題があるらしいという事で、一度冠をはずして、もう一度新しくかたどりをしました。
治るかなという期待があったのですが、新しい冠を装着しても、何も変化はありませんでした。咬み合わせると違和感が残ったままでした。若くて有能そうな歯科医師に出会えたと期待していただけにちょっとがっかりしました。咬み合わせに問題があるというのも本能的に本当かなという思いもありました。
そこで今度は母親にどこか良い歯医者はないかと相談したところ、母親のかかりつけの歯医者が良いということで、そちらに受診することにしました。
そのころには何となく歯の根っこがおかしいのではないかと感じ始めていました。ですから問診の際に、「歯の根っこがおかしい気がするので、根をよく見てください」と担当の歯科医師に伝えました。
担当してくれた歯科医は30代の男性の歯科医でした。今度はきちんと根っこを見てもらえると期待が膨らみました。問診をし、触診をしたりした後、レントゲン写真を撮りました。
今でも覚えています。その歯科医がシャーカステンにデンタルフィルムをかざして、「根っこは何ともありませんね」「冠だけ変えましょう」と言ったのを。
「根は何ともないのでしょうか?」「根は何ともありませんね」「冠だけ変えましょう」
いや、そんなわけないだろ。なんかおかしくないか。ですが、プロが言うことですから反駁できるはずもなく、言われるがまま再度冠だけ交換しました。結果は変わりませんでした。この時点で私は治すのはもうあきらめました。
今度は治してもらえるのではないかと期待を抱きながら、「歯の根っこがおかしい気がするので、根をよく見てください」と担当の歯科医師に伝えたにも関わらず、「根っこは何ともありませんね」「冠だけ変えましょう」と言われてしまい、治すのを諦めてしまったのでした。
東北大学歯学部生になって、なぜ抜髄が上手くいかなかったのか、なぜ何件も相談に行ったのに治してくれなかったのかという歯科の闇を知ることになるのです。
東北大学歯学部生になった私は左上第一小臼歯のことを忘れてはいませんでした。歯学部で歯科について知識が得られると、歯の根の重要性について理解が深まっていきました。自分自身の身体に起こっていることが理解できるようになってきたのです。抜髄に何か問題があったに違いないと。
それで級友に相談したところ、東北大学の先輩で開業されているS先生が根管治療が上手いとS先生を紹介してもらったのです。そこで私の歯に起こっていた衝撃の事実が明らかになるのです。
これまでの経緯を先輩のS先生に伝えました。レントゲンを撮影し、じっとそれを眺めた後、「とりあえず外して中見てみよう」と言われ、数年前に装着したクラウン(歯にかぶせる冠)を除去し始めました。麻酔はしていません。冠を外し、中の土台も外しました。
S先生に「こんなのが入っていたよ」と見せられたものはワッテ、脱脂綿でした。当然、ただの脱脂綿ですから消毒効果等の薬理作用は一切ありません。それどころか当時の歯科医師は素手で治療していました。手袋などは当時ほとんどの歯科で使用していませんでした。その素手で根管の形に丸めた脱脂綿を入れていたわけです。
本来、無菌状態で処置しなければいけない抜髄をばい菌だらけの素手で巻いた脱脂綿だけが根管の中に入っていたのです。ここで皆さん疑問が出てきますよね。なぜ脱脂綿を入れたままかぶせものをしてしまったのか?
実は現在でも使用されている根管消毒薬でホルムクレゾールいわゆるFC(エフシー)と呼ばれる薬剤があります。この薬剤は脱脂綿の先に少量塗布して根管内に入れる消毒薬として現在も使用されています。つまり脱脂綿にFCを塗布して根管内に入れる処置自体は間違いではないのです。問題は最終的に入れるガッタパーチャポイントではなく脱脂綿を入れたままかぶせてしまった事なのです。
しかし脱脂綿をそのまま入れたままにして冠をかぶせてしまうとは一体どういうことなのでしょうか。またその後受診し、診断した歯医者はそのことが分からなかったのでしょうか。私の抜髄を行った歯科医師は忙しくてそのままにしてしまったのか、忘れていたのか、それとも脱脂綿を入れる治療法があるのか。
自分が歯科医師となった今は、なぜ当時の歯科医師が脱脂綿を入れたまま冠をかぶせたのかがわかります。歯科医師となって根管治療を数千本と行う中で、ワッテ根充という言葉があることを知りました。
教科書にはもちろん書いていない言葉です。実際に私自身、ワッテ根充されていた歯の治療も相当数行っています。ですから忙しいとか、忘れていたとか、ついうっかりとかというレベルの話しではないのです。確信犯です。ガッタパーチャポイントで根充することは知っている、しかしそれができないか、やる気もないというのが本当のところでしょう。
そこからS先生はその根管を開けようと1時間ほど治療してくださいました。開けるというのは歯根の先端にはもともと神経の出口があります。その出口を探索して見つけることを開けると言います。
根管治療が得意のS先生が1時間ほど探索しましたが、根管は開かず、その日は貼薬(チョウヤク)して終了しました。根管の中に薬を入れて消毒することを貼薬(チョウヤク)と言います。当時はFC(ホルムクレゾール)を貼薬(チョウヤク)したと記憶しています。こうしてただの綿を詰められ、具合が悪くなった歯をその後2件の歯医者に相談したにもかかわらず何ともないと言われ、冠だけ交換された私の歯の病気の原因を突き止めてくださったS先生の一回目の根管治療が終了しました。
初回の治療を行ってしばらくしたら、数年間悩まされてきた歯の不具合がいつのまにか消失していました。その後何回か貼薬(チョウヤク)し、症状が落ち着いたので根管充填を行いました。
あれから30年以上経過しましたが、今も快調に食事が出来ています。予後も良好です。根尖病巣の再発もありません。S先生には感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。
獨協大学を卒業後、もう一度高校の勉強を死に物狂いで勉強しなおし、やっとの思いで東北大学歯学部に合格し、憧れの歯科医師になれる切符を手にしたのに、その憧れの歯科医師という人たちが意図的にただの綿を入れる、綿が入っているのに何ともないと平気でうそを言う。私が想像していた歯科医師像と実際の歯科医師は違うという認識を抱かせるきっかけとなりました。その疑問は東北大学を卒業して、師匠である飯塚哲夫先生に出会って氷解することになります。
抜髄と感染根管治療
以上、抜髄とその抜髄後に起こる病気について説明をしてきました。要するに、抜髄というのは虫歯が大きくなって痛くなった際に、神経を取る治療です。そして抜髄して神経を取ったにもかかわらず、腫れて痛くなる、抜髄(バツズイ)した後に腫れて痛くなったりする病気を治す治療を感染根管治療(カンセンコンカンチリョウ)と呼びます。
根管治療とは抜髄と感染根管治療の両方を意味します。ですが私たち臨床現場では根管治療を単に根治(コンチ)と呼び、抜髄と区別しています。ですから根管治療と言ったらそれは感染根管治療の意味で使用していることが多いのです。
おおざっぱに言えば抜髄とは根尖に感染が及んでいない状態の神経を除去する治療、感染根管治療とは根尖に感染が及んでしまった状態を治す治療と言えます。
根管治療:保険と自費の違い
特徴 | 国の保険制度 | 自費 |
---|---|---|
日本歯牙保存学会認定医または専門医による治療 | ― | ○ |
人工骨、エムドゲイン、メンブレン等の再生医療 | × | ○ |
リーマー、ファイルは全てワンペイシェントワンユーズ※ | × | ○ |
隔壁 | × | ○ |
ラバーダム | × | ○ |
各種MTAセメント | × | ○ |
歯内療法室・外科的根管治療室※2 | × | ○ |
集中的治療(できるだけ短期間で集中的に治療) | × | ○ |
※ 一人の患者様専用のリーマー・ファイルを使用すること。
よってリーマーやファイルは破折の心配がありません。
※2 室内がレントゲン室になっていて、患者様の移動なしにレントゲン撮影ができるので、より細菌感染を起こしにくい。
根管治療の成否
米国式根管治療や精密根管治療に惑わされていませんか?
根管治療の成否の決定的差は ドクターの能力の違いです。
もちろん道具や材料も最新に越したことはありません。
ネット上ではマイクロスコープやラバーダム、MTAを使用すれば治るような風潮があります。
違います!
私は マイクロスコープもCTもMTAもない時代から30年間根管治療を行ってきて、治癒に導いてきました。
「鬼に金棒」
能力のないドクターがマイクロスコープ、Ni-Tiロータリーファイルのような金棒を持っても振り回されてケガをさせるだけです。
技術と能力があるドクターがマイクロスコープ、CTを駆使するので「鬼に金棒」になるのです。まずドクターが鬼にならなければいけないのです。
これは長年根管治療でドクターの指導に当たってきた私の率直な感想です。
能力の違いとは何でしょうか?
(鬼になるとは
どういうことでしょうか)
それはどれだけ
根管治療のケースを研修したか、
治した経験があるかという事です。
ほぼすべての歯科医師は根管治療の正式な研修を受けることはありません。
また正式な研修を受けたくても、その教育機関が日本にはありません。正式な研修を受けていたら次のような信じられないケースは起こらないはずです。
薬が真ん中までしか入っていないため、膿が貯まっている。
ファイルが折れて骨に刺さっている。
奥の歯も薬が入っていない。
実際は2根管だった。
薬が根尖までしっかりはいっていない。
化膿している
小豆大の病巣
ワッテが入っていた 病巣も大きい
突き出たガッタパーチャポイントと大きな病巣
なぜか根管途中から突き出たガッタパーチャポイント
カウンセリング
お電話または、お問い合わせフォームより
お問い合わせください
01
マイクロスコープ
5台完備
当院では、肉眼の25倍拡大して患部を確認することができるマイクロスコープを使用しています。
特に根管内は細く、途中で曲がっていたり枝分かれしていたりと入り組んだ形状をしています。そのような状態でも、マイクロスコープを使用することで細部までしっかりと診ることができ、感染部分を取り除くことが可能です。
肉眼での治療の場合、根管をしっかりと確認することは難しく、経験と勘に頼ることとなります。根管治療を精密に行うにあたり、マイクロスコープが必須であることは言うまでもありません。
02
歯科用CT完備
通常、歯の状態を確認する場合、平面のレントゲン写真を使用しますが、平面のレントゲン写真では立体の歯に対して神経の管がどこにあって何本通っているかしっかりと判断することはできません。そこで、三次元的に立体画像で確認することができる歯科用CTを使用し、神経の位置や根管をしっかりと確認します。
精密な治療を皆さまへ提供するためにも、精度の高い診査・診断が重要です。
03
ラバーダム
の使用
根管治療を行う際には、唾液や細菌の侵入を遮断するため、治療する歯を中心にお口全体にゴム製の膜を張ります。
口腔内には多くの細菌が存在しています。治療している歯の中に唾液や細菌が侵入してしまうと、うまく治らなかったり、再治療が必要になることがあります。こうしたリスクをカバーしてくれる他にも、治療の水が喉に流れ込まない、歯の周りを清潔に保つことができる、舌や頬の粘膜を傷つける心配がないなど、ラバーダムには多くのメリットがあります。
04
MTAセメント
の使用
MTAセメントとは、治療用の材料の1つで、歯の神経を残す治療に有効です。
根管治療は歯の神経を取る治療のため、栄養が届かなくなることで歯が脆くなり、結果的に歯の寿命が短くなる可能性が高くなります。
しかし、穴やヒビを塞ぐMTAセメントは、封鎖性が高く、殺菌作用があります。また生体親和性に優れているため、周囲の細胞を再活性させることが可能です。それらによって、むし歯が進行したところまでの組織を取り除き、MTAセメントで塞ぐことで、神経の生活反応を残したまま保存することが可能です。
カウンセリング
お電話または、お問い合わせフォームより
お問い合わせください
PROFILE
医療法人桜光会 理事長
あおば歯科クリニック 院長
昆 敏明
Toshiaki Kon
前歯 | 小臼歯 | 大臼歯 | 合計 |
---|---|---|---|
1,516本 | 683本 | 1,981本 | 4,180本 |
(歯科歴25年間に行った感染根管治療の本数は、約7,000本です)
根管治療後、痛みがあります。問題ないでしょうか?
治療後に痛みを感じる場合、組織の損傷や、神経を取り残している可能性などがあります。
他にも、様々な原因が考えられるので、一度ご相談ください。
他の医院で抜歯といわれた歯でも根管治療で残せますか?
「必ず残せます」と言い切ることはできませんが、難症例の経験もありますので、他院で抜歯と診断された場合でも、諦めずにご相談いただければと思います。
根管治療の期間はどれくらいかかりますか?
細菌の進行度合いや患者さまの状態などによって治療期間は異なります。根管治療は根気が必要な治療で、途中でやめてしまうと余計、時間や費用がかかってしまいます。カウンセリングの際におおよその治療期間はお伝えしますので、お気軽にご相談ください。
根管治療とはどのような治療なのでしょうか?
むし歯になり菌が神経まで侵食してしまった場合、神経を除去する治療が必要になることがあります。その除去する治療を根管治療といいます。
根管治療で治らない歯とは、どんな場合なのでしょうか?
むし歯の進行具合や、歯根にヒビが入っている場合などは、治療を行っても改善しないことが予想されます。
他院で根管治療後に痛みが出てしまいました。治療が失敗したのでしょうか?
根管治療後に痛みが出た場合でも、一時的な腫脹や痛みなど、様々な要因が考えられます。そのため、痛みがあった場合でもすぐに失敗と判断する事はありません。まずはレントゲンで状態を確認し、診断を行います。
治療内容 | 費用 | |
---|---|---|
前歯(下顎前歯2112を除く) | 110,000円~165,000円 | |
小臼歯、下顎前歯2112 | 165,000円~248,000円 | |
大臼歯 | 242,000円~363,000円 | |
破折ファイル除去 | 前歯 | 88,000円~132,000円 |
小臼歯 | 110,000円~165,000円 | |
大臼歯 | 132,000円~198,000円 | |
パーフォレーションリペア | 33,000円~50,000円 | |
歯冠長延長手術 | 1歯 | 110,000円~165,000円 |
仮歯(レジン) | 1歯 | 2,200円 |
仮歯 (プロビジョナル) |
1歯 | 5,500円 |
外科的根管治療 | 前歯 | 110,000円~165,000円 |
小臼歯 | 132,000円~198,000円 | |
大臼歯 | 176,000円~264,000円 | |
骨再生医療(人工骨) | 165,000円 | |
抜髄 | 前歯 | 88,000円~132,000円 |
小臼歯 | 110,000円~165,000円 | |
大臼歯 | 154,000円~231,000円 |