根管治療について 膿が貯まって痛い その5
こんにちは! あおば歯科クリニックの院長昆敏明です。
根管治療の続きです。
今回は左上の第一小臼歯の歯ぐきが腫れて切開をしてもらって、痛みへ引いたがおできが治らない、このままでよいのか相談したいという60代女性Hさんのケースです。
患者様に病状説明をする際に、実際に今まで経験したケースをお見せして説明します。皆さん「そんなことがあるんですか?」と驚かれます。先生と呼ばれるプロの方たちがこんなことをされるのかと(こんなひどいことをという意味です)驚くわけです。確かにそうですよね。歯科医師になるためには高い能力と高い医療倫理観が求められます。そのどちらも欠けているとしか思えないケースが多すぎます。ですがどの業界でもそうですが、プロだから安心という時代は終わってしまったのではないでしょうか。
私自身のとんでもない経験
実は私にも歯科の患者になった経験があります。獨協大学でドイツ語を勉強していたころの話です。今から40年以上前、獨協大学の2年生の時に突然左上の歯が痛くなりました。水はしみる、お湯もしみる、何もしていなくてもズキズキする。明らかに虫歯がひどくなったんだなという状態でした。どこの歯科医院で治療を受ければよいか悩んだ挙句ちょっと古びた歯科医院を選択したのです。待合室で待つ間、その歯医者を選んだのは失敗だったと思い始めました。なぜなら30分近く待合室で待っている間ずっと私一人だけだったのです。最初に受付を済ませた50代過ぎの女性の方も診療室に入ってしまい待合室には私一人だけ。他の患者さんがいない=あまり上手ではないという事を連想したからです。名前を呼ばれて診療室に入ると50代前後の歯科医師が椅子に座って待ち構えていました。先ほど受付をしてくれた女性が横に立っていて、どうもその歯科医師の奥さんのようでした。二人だけで診療しているようです。さすがにこの状況はまずいと思いました。診察台もところどころ埃がかぶっているような状態を見て、帰りたくなったのですが、いったん座って帰るとは言えるものではありません。しかも痛いのですから。そのままうまいか下手かもわからない歯科医師に麻酔を打たれ、左上の小臼歯の神経を取る処置を受けることになったのです。幸い水がしみる痛みからは開放されました。それから数回通院し、最終的に金属のかぶせものが入りました。ところが食事をして咬むと何か嫌な感じがするのです。ものすごく痛いというわけではないのですが、何か今までと違うのです。そこでほかの歯科医院に相談に行くことにしました。今でいうセカンドオピニオンです。今度は近くの駅中にあった最新の設備が整った医院を選びました。もう古くて埃をかぶっているところはダメだと考えたからです。セカンドオピニオンで行った歯科医院の歯科医師は開業したてなのか30代前半の若くてはつらつとした先生でした。オープンしたてなのかとてもきれいで感じが良い院内です。ここなら大丈夫だろうと思い、先生にこれまでの経緯を話しました。きちんと目を見て話してくださるとても好感の持てる先生です。この先生ならきっと治してくれるだろうと期待が持てました。この続きは後日お話しますね。
突き出たガッタパーチャポイント
さてHさんのケースです。お口を拝見すると左上第一小臼歯の根尖部にフィステルがありました。まずレントゲン写真から撮影しました。
ここまで私のブログを読んできてくださった方ならこちらのレントゲン写真を見て何が原因で歯ぐきが腫れたのかもうわかりますね。根っこの先からガッタパーチャポイントが突き出ています。そのガッタパーチャポイント周囲に透過像が映っています。すでに歯根のう胞が出来ています。
かぶせものを外して再度レントゲン写真を撮りました。
完全に突き抜けています。赤矢印部分です。
何度も話しますが、歯の根っこはあごの骨に支えられています。なのでこのガッタパーチャポイントは骨に突き刺さっているという事です。
Hさんに病状をご説明し、ご納得されましたので治療を開始しました。今回のケースは保存治療だけではなく外科手術も必要になる可能性が高いこともお伝えしました。
根管内のガッタパーチャポイントを除去しました。
骨内に突き出ているガッタパーチャポイントはそのまま残っています。残っているガッタパーチャポイントも感染源になっている可能性が高いので除去したいです。ですが上あごの骨の中にこのガッタパーチャポケットがあるのです。手術しかないです。
Hさんも最初の説明の時から手術は覚悟していたとのことでした。手術を行いました。
歯根端切除手術(シコンタンセツジョシュジュツ)
いわゆる保険でいうところの歯根端切除手術(シコンタンセツジョシュジュツ)を行いました。歯根の先が少しなくなっています。フィステルは手術直後から治癒し、現在も再発はありません。
歯根の先がカットされています。いわゆる歯根端切除手術(シコンタンセツジョシュジュツ)と呼ばれているのは歯根の先を切除するからです。
治癒
術後2年後のレントゲン写真です。当然、突き抜けていたガッタパーチャポイントはもうありません。根尖にあった透過像もきれいに治っています。
拡大しました。骨が再生しているのが分かります。
赤矢印の部分です。
Hさん治って本当に良かったですね。