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根管治療について 歯ぐきが腫れて痛い その10

こんにちは! あおば歯科クリニック院長昆敏明です!

本日も根管外異物(コンカンガイイブツ)についてのケースをご紹介します。当時20代の女性の患者さんでした。幼いころから虫歯が多発していて、上の前歯も神経を取ったという事でした。そこが腫れたり引いたりしていたので、歯医者に行ったがどうしようもない(抜かないと治らない)と言われてあおば歯科クリニックに受診したのでした。まだ若いSさんのお口を拝見すると左上1番の根尖部(コンセンブ)にフィステルがありました。おそらくここが腫れたり引いたりしているのでしょう。

その前に私の左上の抜髄してもらった歯の不具合の続きをお話しします。獨協大学時代に虫歯で初めて抜髄(バツズイ)をした私の身体に実際に起こった体験です。抜髄(バツズイ)をして痛みはなくなったものの、かぶせた後から不具合が続いたため転院するもどこに行っても何ともないと言われ、かぶせものだけを交換されていました。憧れの東北大学歯学部に入学し、歯科の勉強を通じて歯根治療の重要性に気が付き、根管治療の上手い先輩S先生のクリニックに伺うことになったのでした。

これまでの経緯を先輩のS先生に伝えて治療が開始されました。私の左上の小臼歯の根管に入っていたのはガッタパーチャポイントではなく、ただの脱脂綿だったのです。忙しくてそのままにしてしまったのか、忘れていたのか、それとも脱脂綿を入れる治療法があるのか。自分が歯科医師となった今は なぜ当時の歯科医師が脱脂綿を入れたまま冠をかぶせたのかがわかります。歯科医師となって根管治療を数千本と行う中で、ワッテ根充という言葉があることを知りました。教科書にはもちろん書いていない言葉です。実際に私自身、ワッテ根充されていた歯の治療も相当数行っています。ですから忙しいとか、忘れていたとか、ついうっかりとかというレベルの話しではないのです。確信犯です。ガッタパーチャポイントで根充することは知っている、しかしそれができないか、やる気もないというのが本当のところでしょう。当たり前ですが歯の中は人間の体の中です。おなかの手術をした後、わざとガーゼを留置したままにする医者はいません。ですが私の歯の根の中にはただの綿が入っていたのです。抜髄(バツズイ)した後の歯の根の中に、ただの綿が入っていた事件は、その後私に歯医者というのはどういう人なのだろうかという疑問を抱かせるきっかけとなりました。その疑問は東北大学を卒業して、師匠である飯塚哲夫先生に出会って氷解することになります。この続きはこの次にお話しします。

 

Sさんのレントゲン写真を見てみましょう。何でしょうこれは。左上2番の根尖に何かが飛び出しています。一体これは何でしょうか。

矢印の部分です。

よく見ると矢印の部分だけではなく、その他にも何かしらの不透過物(フトウカブツ)が見えます。黄色の丸の部分です。

とても根管方向から除去するのは不可能です。Sさんには外科手術をして根管外の異物を摘出する提案を行いました。なぜ神経を取っただけなのにこんなことになっているのか。Sさんも私の説明を聞きながら自分の身体に起こっていることがなかなか受け入れられない様子でした。ですが前医ではただ抜歯するしかないと言われるだけで、なぜなのか理由を言ってくれない。今はなぜ自分の身体がこのようなことになっているのか理由は理解できた。あとはそれを受け入れるかどうか。Sさんは私の説明をご自身で二回反復したあと、手術しますとはっきりとした口調でおっしゃいました。

治療はまず保存治療から開始しました。冠を外して、金属ポストも外して、前医が入れたガッタパーチャポイントを除去して、根管内を消毒することから始めました。

手術中の写真です。歯肉を剥離するとすでに唇側の骨は吸収されていて消失していました。のう胞の中の黄色い膿(ウミ)が透けて見えています。

矢印の部分です。

骨もだ円状に消失しています。緑色の丸の中です。

のう胞をコッヘルで把持して取り出しています。

矢印部分がのう胞です。

黄色の囲み部分です。

のう胞を取り出した後の状態です。骨の中が空洞になっています。

矢印部分です。

摘出したのう胞です。この中にレントゲンに映っていた不透過物が入っていました。

手術後10年のレントゲン写真です。再発もなく順調に経過しています。

Sさん、頑張って手術して良かったですね。