根管治療について 膿が貯まって痛い その11
こんにちは!あおば歯科クリニックの院長昆敏明です。
本日も根管治療のケースをお話しします。
50代男性Kさん上の前歯を治したいという主訴で来院されました。上顎前歯を拝見するとすでに差し歯が装着されていました。右上の3番とその隣の2番にフィステルがありました。まずは病巣が大きい3番から治療開始しました。
その前に私の左上の抜髄してもらった歯の不具合の続きをお話しします。獨協大学時代に虫歯で初めて抜髄(バツズイ)をした私の身体に実際に起こった体験です。抜髄(バツズイ)をして痛みはなくなったものの、かぶせた後から不具合が続いたため転院するもどこに行っても何ともないと言われ、かぶせものだけを交換されていました。憧れの東北大学歯学部に入学し、歯科の勉強を通じて歯根治療の重要性に気が付き、根管治療の上手い先輩S先生のクリニックに伺うことになったのでした。そこで判明したことは、私の根管の中に脱脂綿が詰められていたのです。
S先生に「こんなのが入っていたよ」と見せられたものはワッテ、脱脂綿でした。そこからS先生はその根管を開けようと1時間ほど治療してくださいました。開けるというのは歯根の先端にはもともと神経の出口があります。その出口を探索して見つけることを開けると言います。根管治療が得意のS先生が1時間ほど探索しましたが、根管は開かず、その日は貼薬(チョウヤク)して終了しました。根管の中に薬を入れて消毒することを貼薬(チョウヤク)と言います。当時はFC(ホルムクレゾール)を貼薬(チョウヤク)したと記憶しています。こうしてただの綿を詰められ、具合が悪くなった歯をその後2件の歯医者に相談したにもかかわらず何ともないと言われ、冠だけ交換された私の歯の病気の原因を突き止めてくださったS先生の一回目の根管治療が終了しました。
Kさんの右上3番のレントゲン写真です。右上3番と2番の根尖に透過像があり、化膿しているのが分かります。
赤矢印が3番、黄色の矢印が2番の根尖です。明らかに黒いです。
3番は保存治療で治るという予想のもと、治療を開始しました。3番の根尖に水酸化カルシュウム系の薬剤を入れているレントゲン写真です。
赤矢印の部分です。
根管通過法を数回行いました。MTA系シーラーで根充したレントゲン写真です。すでに治療開始時の病巣と比べて明らかに病巣が縮小しているのが分かります。
治療開始時と比べてみてください。
明らかに縮小しています。次は2番です。実は2番はデンタルから気になる所見がありました。黄色矢印は根尖病巣です。気になっていたのは赤矢印部位分にある直線状の不透過物です。なぜ根管方向から逸脱して遠心方向に向いているのか。
赤丸の中の不透過物(フトウカブツ)です。実はこの2番は当初から外科手術を行うと患者さんにお伝えしていました。理由はマイクロスコープで確認すると根管が破壊されているように見える事でした。2番で2根管ある場合は珍しくないのですが、今回のケースは2根管に見えるもう一根管が人為的なものに見えたのです。
手術は唇側のフラップを起こすことから開始しました。根尖ではない、歯根中央部の歯槽骨が完全に消失しています。よく見るとキラッと光る異物が見えます。
拡大して見てみましょう。
確かに光るものがあります。黄色で囲んだ部分です。
さらに拡大します。何に見えますか。
以前ファイルやリーマーといった器具の破折のお話をしました。
似ていますね。なんとファイルかリーマーが歯根中央部から唇側に突き出ています。
持針器(ジシンキ)で先端をつまんで取り出しました。
取り出したファイルです。
この赤丸の不透過物がファイルです。
拡大します。
根尖から突き出ているリーマー、ファイルの除去は経験がありましたが、歯根中央部からパーフォレーションをおこして突き出ているファイルの除去は私も初めての経験でした。なぜこんなところからパーフォレーションを起こしてしまったのでしょうか。
ファイルの除去を行い、逆根管充填をして手術は無事終了しました。いずれにしてもKさん治ってよかったですね。