根管治療について 膿が貯まって痛い その14
こんにちは!あおば歯科クリニックの院長昆敏明です!
久し振りに私の左上の抜髄してもらった歯の不具合の続きをお話しします。獨協大学時代に虫歯で初めて抜髄(バツズイ)をした私の身体に実際に起こった体験です。抜髄(バツズイ)をして痛みはなくなったものの、かぶせた後から不具合が続いたため転院するもどこに行っても何ともないと言われ、かぶせものだけを交換されていました。憧れの東北大学歯学部に入学し、歯科の勉強を通じて歯根治療の重要性に気が付き、根管治療の上手い先輩S先生のクリニックに伺うことになったのでした。私の歯の中から出てきたものはなんとただの腐った脱脂綿(ワッテ)だったのです。
その後S先生は根管長を測定し、根管内を形成(きれいにすること)。かなりの時間をかけて根管内を形成していました。こうして一回目の根管治療が終了しました。初回の治療を行ってしばらくしたら、数年間悩まされてきた歯の不具合がいつのまにか消失していました。その後何回か貼薬(チョウヤク)し、症状が落ち着いたので根管充填を行いました。
あれから30年以上経過しましたが、今も快調に食事が出来ています。予後も良好です。根尖病巣の再発もありません。S先生には感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。
さて本日は当時高校生だったO君です。お母さんがあおば歯科クリニックに通われていたのですが、高校生O君は家が遠いために地元の歯医者さんに通っていたそうです。そちらで右下6番の根管治療を行っていたそうです。ですが右下6番の治療が始まってからなかなか腫れが治まらないという事で相談に来院されたのです。
お口を拝見すると確かに右下6番の根尖部が腫脹していて、すでにフィステルが出来ていました。レントゲン写真を撮影したところ、近心根にも遠心根にも透過像が生じており、同時に根管が非常に狭窄(キョウサク)していることが分かりました。
赤矢印部分が化膿している病巣です。
狭窄(キョウサク)しているというのは、根管が極端に細くなっているという事です。レントゲン写真を見ると所どころ根管が消失しているところがあります。これは根管が狭窄している所見の一つです。根管が極端に狭窄しているとリーマーやファイルの挿入が困難になります。リーマー、ファイルの挿入が困難になるという事は根尖病巣に到達出来ない、到達できたとしてもその後の根管形成(根管内をきれいにすること)が出来ないことになってしまいます。つまり治せないという事です。
黄色矢印部分で根管が消失しているのが分かります。体の防御反応として二次象牙質が生成されていると思われます。前医もその辺で苦労していたのかもしれません。
近心根に2根管、遠心根に2根管合計4根管の歯根でした。予想通り根管は著しく狭窄しており、遠心頬側根以外は形成号数は20号まで行くのに精一杯でした。形成号数が少なくとも25号まではいかないとガッタパーチャポイントで根充するのは厳しくなります。なのでO君のケースは遠心頬側根はガッタパーチャポイントで根充し、その他の3根、近心頬側根、近心舌側根、遠心舌側根はシルバーポイントで根充を行いました。
根充後5年後のレントゲン写真です。あんなに大きかった根尖病巣が消失して、骨が再生しているのが良く分かります。
鮮明に白く写っている3本がシルバーポイントです。遠心根の薄く白っぽいのがガッタパーチャポイントです。
赤矢印がシルバーポイントで、黄色矢印がガッタパーチャポイントです。
8年後のレントゲン写真です。
11年後のレントゲン写真です。再発もなく予後は良好ですね。
O君、治ってよかったですね!