ケース10 歯周病は治らない
年齢 52歳
性別 女性
主訴 左の下の奥歯がしみて痛かったが、知覚過敏と言われていた。そのうち咬むと痛くなり外側の歯ぐきが腫れてきた。歯周病なので治らないとも言われたが、本当に治らないのか見てほしい。
現状 左下7番の頬側に歯肉膿瘍を形成、遠心側に亀裂が見られる。ポケットは頬側に8ミリ計測できる。自発痛はないが咬合痛がある。
【黄色矢印が歯肉膿瘍 赤矢印が亀裂】
【近心根と分岐部に透過像がある】
【黄色矢印が透過像】
【CT画像 頬側と分岐部に骨がない】
【黄色矢印 骨消失部分】
治療経過 レントゲン上で失活の診断は出来ていたが、電気歯髄診も行ったが反応はなし。Wさんにはその旨説明し、インレーを除去。
【遠心の亀裂が髄床底部まで波及している】
【赤矢印 亀裂 黄矢印 歯肉膿瘍】
亀裂がこれ以上拡大すると歯牙の保存が難しくなる可能性があるので、矯正用バンドで隔壁を兼ねて作成。遠心の亀裂もセメントで封鎖。
【青矢印 矯正用バンド 黄矢印 歯肉膿瘍 赤矢印 亀裂封鎖したセメント】
準備が出来たので感染根管治療を開始。近心根2根、遠心根2根 合計4根管であった。
【黄矢印 近心頬側根 赤矢印 近心舌側根 緑矢印 遠心頬側根 青矢印 遠心舌側根】
ポケットに造影剤を入れて撮影。 根分岐部の歯根中央部まで入っている。
【黄矢印 挿入した造影剤】
【水酸化カルシウム製剤を根管貼薬して経過観察】
【近心根の透過像は消失したように見えるが分岐部はまだ透過している】
この後CTを再度撮影し、根分岐部の骨再生、歯根尖の骨再生を確認できた。したがって外科的根管治療は行わず、保存治療で完了となった。
【CT画像 根分岐部の骨再生が確認できる】
【黄矢印 根分岐部骨再生部分】
【治療後2年 骨再生が見られる】
【治療前】 【治療後】
考察 根尖病巣からのフィステルが歯周靱帯を通過してポケットと交通してしまうケースがあります。一見すると歯周病の急性発作のように誤診をしてしまいかねませんが、問診をきちんとしデータを客観的に見れば診断できます。そうは言っても過去何人かのドクターを教育してみてポケットと根尖病巣が交通しているケースで歯周病と誤診しないようにと注意を促しても誤診してしまった経験があるので、なかなか難しいことなのだと思います。通常、歯周根尖合併症の場合は根管治療から開始するのが原則です。歯周療法から治療を開始しすると根管からの細菌がポケットに入り込んで歯周病が治癒しないからです。