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最新のセカンドオピニオン症例

【40代女性 左上奥歯の腫れが引かない「次に痛みが出たら抜歯」と言われたケース】

40代女性のMさんからセカンドオピニオンのご相談をいただきました。

左上奥歯に痛みが出たため、かかりつけ歯科医院で根管治療を受けたところ、痛みは改善したそうです。しかし、その後も頬の腫れがなかなか引かず、不安な状態が続いていました。

さらに、「次に痛みが出た場合には抜歯になる可能性があります」と説明を受けたことから、

「本当に歯を残すことはできないのだろうか」と考え、当院を受診されました。

診察すると、左上奥歯の歯ぐきには腫れが認められました。また、この腫れは大きくなったり小さくなったりを繰り返しているとのことでした。

そこでまず、CT撮影を行い、腫れの原因を詳しく調べることにしました。

黄色矢印で示した部分が、Mさんが「腫れたり治まったりを繰り返している」とお話しされていた歯ぐきです。

まず、歯の根の状態や周囲の骨の変化を確認するために、部分的なレントゲン撮影を行いました。

近心頬側根の先には黒く見える影(透過像)が認められました。また、その近くには円形の不透過像が確認でき、根管治療で使用された材料の一部が根の先を越えている可能性が考えられました(赤矢印)。

黄色で囲んだ部分は、炎症によって骨が吸収されている可能性がある領域です。

さらに詳しく観察すると、遠心頬側根の先にも同様の変化が認められ、複数の根に病変が存在している可能性が示唆されました。

レントゲン写真から、根管治療で使用される材料の一部が根の先を越えている可能性が認められました。

このような所見があっても、それだけで問題になるとは限りません。しかし、根の周囲に炎症を示す影が認められる場合には、その関連性を詳しく調べる必要があります。

そこでCT撮影を行いました。

真上から

真上からのCT画像

真横から

真横からのCT画像

ボリュームレンダリング

ボリュームレンダリング画像

真上からのCT画像では、1番根を取り囲む透過像があり、根管外に不透過物が確認できます。

真横からでは2番根の根尖にも明らかな透過像があり、感染している可能性があります(黄色矢印)。

1番根の根尖からは根充剤と思われる不透過像が頬側の骨まで達しているように診えます(赤矢印)。

ボリュームレンダリングを診ると不透過像が回転する形で骨内にあり、その周囲に透過像があります。

これらの所見から、複数の根管に感染が残存している可能性が高いと考えられました。

また、1番根の先には根管充填材と思われる不透過像が認められ、周囲の病変との関連性が疑われました。そのため、根管治療による感染源の除去に加え、必要に応じて根の先に存在する不透過物を摘出することで、治癒の可能性を高められるのではないかと診断しました。

Mさんにはレントゲン写真やCT画像をご覧いただきながら現在の状態をご説明しました。その結果、「歯を残せる可能性があるのであれば、根の先に存在する不透過物の摘出も含めて治療を受けたい」とご希望されました。

そこで、まず被せ物を除去し、根管内の状態を詳しく確認することから治療を開始しました。

上顎第一大臼歯では、近心頬側根にMB2と呼ばれる副根管が存在することが少なくありません。そのため、この根管の有無にも十分注意しながら治療を進めました。

銀の被せ物を除去し、土台も慎重に取り外しました。

歯ぐきに近い部分では歯質の不足が認められたため、まず隔壁を作製し、治療中に細菌や唾液が侵入しない環境を整えました。

そのうえでオプチダムを装着し、無菌的な環境の確保に努めながら治療を開始しました。根管治療では、感染源を除去することだけでなく、新たな細菌を根管内に侵入させないことも重要だからです。

歯の周囲に見える青色の材料は、ラバーダムと歯とのすき間を封鎖するためのシーリング材です。治療中に唾液や細菌が根管内へ侵入しないようにする目的で使用しています。

写真は髄腔開拡を終えた段階です。髄腔開拡とは、歯の内部にある根管を確認し、適切に治療を進めるための入口を作る処置です。

この時点では、3本の根管の入り口を確認することができました。しかし、上顎第一大臼歯ではさらにMB2と呼ばれる追加の根管が存在することがあるため、慎重な確認が必要になります。

赤矢印で示した根管が近心頬側根です。上顎第一大臼歯では、この近心頬側根にMB2と呼ばれる副根管が存在することが多く、治療の成否に大きく関わることがあります。

今回の術前画像ではMB2の存在を明確に確認することはできず、1本の根管のみが認められるように見えました。

しかし、MB2は解剖学的に非常に複雑な位置に存在することが多く、CTやマイクロスコープを使用しても容易に発見できるとは限りません。そのため、画像診断だけに頼るのではなく、実際の髄腔内の形態を慎重に観察しながら探索を進める必要があります。

根管治療では「見えている根管を治療する」だけでなく、「見えていない根管が存在しないかを確認する」ことも重要な診査の一つです。

微細な超音波振動を利用した器具を用いて、近心頬側根の内部を慎重に確認していきます。

根管の入り口は非常に小さく、肉眼では確認が難しいことも少なくありません。

そのため、マイクロスコープによる拡大視野のもとで、歯の構造を傷つけすぎないように注意しながら、MB2の有無を丁寧に探索しました。

処置を進めるうちに、少しずつMB2と思われる根管の入り口が確認できるようになりました。

左の写真では、赤矢印が近心頬側根です。この部分にMB2が存在する可能性を考えながら慎重に探索を進めました。

中央の写真では、黄色矢印が主根管、赤矢印がMB2と思われる部分です。まだごく小さな点状に見えるだけですが、副根管の存在が疑われました。

さらに慎重に探索を続けることで、右側の写真の赤矢印部分に明確な根管口を確認することができました。

根管治療では、感染した根管を見落とさずに発見することが重要です。今回もMB2を確認できたことで、これまで十分に処置されていなかった可能性のある根管に対して、適切な洗浄・消毒を行うことが可能になりました。

治療を進めた結果、MB2を含めて合計4本の根管が存在することが確認できました。

MB2以外の3本の根管には、過去の根管治療で使用された充填材料が認められたため、それらを慎重に除去したうえで、根管内の清掃と洗浄を行いました。

一方で、根の先を越えて周囲の骨の中まで達している充填材料については、根管内からの処置だけで安全に除去することが難しい状態でした。そのため、事前にご説明していたとおり、外科的な処置を併用する方針としました。

左のレントゲン写真は、4本すべての根管の清掃・洗浄を終えた後、MTAを用いて根管を封鎖した状態です。黄色矢印の部分では、根の先まで緊密に充填されていることが確認できます。

中央の拡大写真では、近心頬側根に2本の根管が存在していることが分かります(緑色矢印)。また、赤矢印は根の先の外側に認められる充填材料を示しています。

右側の治療前のレントゲン写真と比較すると、近心頬側根に2本の根管が存在していたことがより明確に確認できます。

根管治療を終えた後、予定どおり外科的歯内療法を行いました。

写真①は歯ぐきを開き、病変部を確認した状態です。頬側の骨には病変による吸収が認められ、楕円形の欠損が形成されていました。

写真②は病変組織を慎重に除去した後の状態です。長期間の炎症の影響により周囲の骨が吸収されており、歯根の表面が確認できました。また、この病変内にはガッタパーチャポイントと思われる不透過物が認められました。

写真③は超音波を利用した専用器具を用いて、歯根の先端に存在する汚染部位を除去しているところです。

写真④では、病変組織を除去した後の骨面に対し、ヤグレーザーを用いて殺菌処置を行っています。

写真⑤は歯根の先端を切除した後、マイクロスコープを用いて歯根破折の有無や切断面の状態を確認しているところです。

写真⑥はその拡大像です。近心頬側根に2本の根管が存在していたことが明瞭に確認できます。

写真⑦は処置を終えた後、骨の回復を促す目的で人工骨を填入した状態です。

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術後にレントゲン撮影を行い、根の先に存在していた根管充填材が除去できているかを確認しました。

術前に認められていた不透過像は消失しており、予定していた部位の処置を行うことができました。

今回のMさんの症例では、未処置であったMB2への対応に加え、根の先に存在していた病変組織および不透過物を外科的に除去することができました。

その後の経過も良好で、症状は消失し、画像上でも治癒傾向を確認することができました。

下のレントゲン写真は経過観察時のものです。病変部では骨の再生が認められ、順調な治癒経過をたどっています。

「次に痛みが出たら抜歯」と説明され、不安なお気持ちで来院されたMさんですが、歯を残すことができて本当に良かったと思います。