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根管治療について 膿が貯まって痛い その4

こんにちは! あおば歯科クリニックの院長昆敏明です。

本日も根管外異物(コンカンガイイブツ)についてお話していきます。

都内からご相談にいらした50代女性Sさんのケースをご紹介します。右下の奥歯に違和感を感じるということでした。右下一番奥にインプラントが映っています。患者様はその一つ手前がおかしいと訴えられていました。

レントゲン写真です。

右下6番の近心根(キンシンコン)の根尖(コンセン)をよく見てください。ガッタパーチャポイントです。根の先から白い線状のものが飛び出していませんか。ガッタパーチャポイントです。飛び出しているガッタパーチャポイントの周囲が黒くなっています。すでに根尖病巣(コンセンビョウソウ)ができています。小さい歯根のう胞が出来ているという事です。違和感の原因はこれの可能性が高いと思われました。

まず現状を詳しく患者様にご説明しました。おそらく原因としては右下6番の近心根から突き出ているガッタパーチャポイントであること、すでにその周囲には歯根のう胞ができていることをご説明しました。そのうえでどうすれば治る可能性があるのかをご説明して、納得されたので治療を開始しました。今回のケースはていねいで細心の処置を心がければ、突き出たガッタパーチャポイントを手術ではなく保存的に除去出来ると判断しました。

赤矢印が突き出ているガッタパーチャポイントです。

黄色の丸で囲んだところのガッタパーチャポイントが突き出ている周りが透過しているのが分かります。

幸い、手術なしで除去することができました。赤矢印を見てください。ガッタパーチャポイントがなくなっています。

MTAセメント

近心根は一見するとガッタパーチャポイントが入っていないように見えます。今回は近心根はガッタパーチャポイントではなく、MTAセメントという薬剤で根充をしました。MTAセメントはMineral Trioxide Aggregate(ミネラル三酸化物)略称です。1993年にアメリカ人の研究者により開発されました。コンクリートからヒントを得て開発されたと言われています。口の中は常に唾液で湿潤しています。その過酷な環境で歯科で使用するセメントの類を硬化させるのは実は大変な苦労があります。通常、濡れてしまうと硬化しないからです。ところが逆に水分がないと硬化しない材料が身近に存在します。そう、コンクリートです。建物の基礎を作る際、コンクリートを流します。そのあとコンクリートの上に水を撒くのをご存知の方もいらっしゃると思います。実はコンクリートは水がないと固まらないのです。そこからヒントを得て、コンクリートの主成分を改良して歯科に応用したのです。ですからMTAセメントの初期の製品は硬化させるのに、コンクリートと同じように水分を含ませた綿球を置いて硬化させていました。現在では水綿球を置かなくても硬化する製品も開発されて、使い勝手が大変よくなりました。

こちらはプロルートMTAというデンツプライ社の製品です。こちらが一番有名なMTAです。現在では様々なMTAが開発されていて、用途に合わせて使用しやすい製品があります。ただ残念なことに保険での使用は覆罩剤(フクトウザイ)でしか認められていません。世界中で根充剤として使用されているにもかかわらず、日本の保険ではなぜか認可されていません。

MTAセメントは従来のシーラーと比べて優れている点が多くあります。従来のシーラーは硬化するにつれて縮小する欠点がありました。MTAセメントは逆に膨張します。縮小すると隙間ができるのでそこが細菌感染の温床になるのですが、わずかに膨張することにより、封鎖性が上がり細菌の温床となる空所を作らないというメリットがあります。また硬化すると強いアルカリ性となるのです。この強アルカリ性が細菌に対して優れた殺菌性を発揮します。それから従来のシーラーは硬化しても強度が弱かったのですが、このMTAセメントは硬化するとアマルガムという金属に近い硬さを発揮します。またMTAセメントの一番の能力は硬組織の誘導能があるという事です。パーフォレーションを起こしていたり、根尖が破壊されているような場合でも骨を再生させる能力があることが分かっています。

今回のケースでは根管口(コンカンコウ 神経が出ていく根っこの先)が開いてしまっていたので、MTA単独で根充をおこないました。

治癒

ガッタパーチャポイントも除去され、病巣も消失しているのが分かります。Sさん治って本当に良かったですね。