初診の方限定WEB予約
狭山市の歯医者 あおば歯科│できるだけ歯を残す安心な歯科治療
0120-75-1314

根管治療について 歯ぐきが腫れて痛い その2

こんにちは! あおば歯科クリニックの院長昆敏明です。

左下の奥歯の歯ぐきが腫れて、抜歯と言われたCさん40代男性のケースを見ていきます。今回のケースも根管外異物(コンカンガイイブツ)のケースです。

根管外異物(コンカンガイイブツ)って何?という方のために復習からしていきます。

根管外異物(コンカンガイイブツ)を理解してもらう前に、「神経を取る」という治療を理解しておく必要があります。虫歯が進行していくと冷たいものも熱いものもしみて痛くなってきます。これは歯髄炎(シズイエン)と言って神経にまで炎症が波及したからです。歯科医院ではそのような場合に「神経を取る」治療を行います。しかしこの「神経を取る」治療は非常に難しいのです。「神経を取る」治療のことを抜髄(バツズイ)と言います。歯科大学を卒業したばかりの若い先生達に苦手な治療のアンケートを取るとこの抜髄(バツズイ)が上位に来ます。抜髄(バツズイ)は簡単ではないのです。

そもそもこの神経全部取れると思いますか。

本物の歯の神経に染色液を入れて、その走行を調べた写真です。複雑怪奇です。

                 

患者さんは神経を取るというと一本の糸をすーと引くと取れてくるようなイメージをお持ちのようです。私も歯科医になる前はそんなイメージを持っていましたが、神経を取る処置はまるで難攻不落の敵に立ち向かうほどの忍耐力を必要とされます。大臼歯などは2時間ぐらいかかることもあります。

                

虫歯菌に侵された神経(歯髄)や汚染された象牙質をリーマー、Kファイル、Hファイルで取り除いていきます。


写真はあおば歯科クリニックで使用しているKファイルです。

ドイツのジッペラー社製を使用しています。

 

リーマー、ファイル類です。

右からHファイル、Kファイル、リーマーです。見分けがつかないですね。

先端を見てみましょう。

右からHファイル、Kファイル、リーマーです。よく見ると違いが分かります。それぞれ用途があり、目的によって使い分けます。

神経を取ったらそれで治療が終了ではありません。その後神経があった管の中にばい菌が侵入しないように薬を詰めていきます。普通はガッタパーチャポイントと呼ばれる材料とシーラーという薬剤を併用して根管(コンカン)を封鎖します。場合によっては根管内全てをMTAと呼ばれるシーラーで封鎖することもあります。ところがこの封鎖も難しい技術と診断力が必要とされます。 

水色の部分がガッタパーチャポイントです。

ガッタパーチャポイントです。この薬とシーラーを根の中に入れていきます。

ガッタパーチャポイントは歯根(シコン)の先ピッタリが良いと言われています。ですが歯根の先とはいったいどこなのかという問題もあります。なので一概にピッタリが良いと限らないケースもあります。ここでは一応、根尖(コンセン)付近が良いということにしておきましょう。

             

根尖付近にガッタパーチャポイントが到達しています。

神経の管に入れる薬が根尖(コンセン)まで入っていません。途中までしか入っていなかったり、薬がスカスカだったりするとその空間にばい菌が繁殖して感染を起こします。そうすると神経を取って痛くなくなったはずなのに、その後歯ぐきが腫れて痛くなることがあります。

 

根の先が黒くなっています。ガッタパーチャポイントもほとんど入っていません。

上の写真の模式図です。水色がガッタパーチャポイントです。赤い点が根尖病巣、膿が貯まっているところです。

神経を取る治療、抜髄(バツズイ)をしてもらったのですが、歯ぐきが腫れて痛くなってきている状態です。この治療を行った歯医者さんに行っても治せないだろうと想像できますね。この病気を作ったのはその歯医者さんだからです。実際、前回お話ししたMさんは抜髄した都内の歯医者に行ったところ、抜歯と言われています。

この方も別の歯医者さんに行きました。

根尖にあった黒い影が消えています。

水色ガッタパーチャポイントです。根尖病巣の赤い色はなくなっています。治って良かったですね。

ここまでが復習です。

本日のケースは左下6番におできができて、抜歯と言われた方のケースです。2021に来院されたCさんです。40代男性の方でした。数年前にどちらかの歯医者さんで神経を取ったそうです。数年は何事もなく過ごしていたそうですが、2年前に左下第一大臼歯の歯ぐきが腫れて痛みが出てきました。神経を取った歯医者とは別の歯医者に行って、歯ぐきを切開して膿をだしたら落ち着いたそうです。その後歯ぐきのところにニキビのようなおできができたので、また別の歯医者に行って、そのことを訴えたところ、「痛くないのであればこのままか、抜くしかない」と言われたそうです。

お口を確認したところ、左下の6番の根尖付近にフィステルがありました。レントゲンを撮影しました。

 

お判りでしょうか。黒い影があります。第一大臼歯、第二大臼歯ともに根尖病巣があります。

赤く囲んだ方が第一大臼歯、黄色で囲んだ方が第二大臼歯です。フィステルは第一大臼歯由来と思われる位置にありました。

第一大臼歯の近心根をよく見ると根充剤であるガッタパーチャポイントとは違う物体が根尖付近にあります。

その物体は螺旋(ラセン)状になっているのが分かります。

しかも根尖から飛び出ています。ここの飛び出ている物体が何かお分かりですか?こちらに似ていませんか。

リーマーの類です。実は神経を取る際に、リーマーやファイルを折ってしまい、根管の中にそのまま残ってしまうことがあります。折れてしまったリーマーやファイルが原因で根尖病巣が必ず生じるわけではないのですが、今回のケースは突き出て骨に刺さっています。

このようなケースで過去に裁判になったケースもあります。それも最初に治療した先生がリーマーを折ったにもかかわらず、後から再治療した先生が折れていることを患者に説明しなかったという事で敗訴しています。訴えられて、敗訴したのはリーマーを折った先生ではないのです。

リーマー破折については別の機会に詳しくご説明します。

今回のCさんのケースを治せるかどうかは、この突き出ているファイルがとれるかどうかにかかっています。保存的に除去できるのかそれとも前回のMさんのように外科手術を行って除去するのか診断しないといけません。

今回のケースは保存的、つまり外科手術は行わずに除去できるだろうと説明をして納得されたので根管治療を開始しました。

CT画像です。

明らかに近心根、遠心根の根尖に黒い透過像があり、近心根の先からファイルが飛び出ています。

CTを冠状断面で見ると近心根は2根管で、ファイルが突き出ているのは頬側(キョウソク)の根管だという事が分かります。

このファイルをマイクロスコープを見ながら、最新の機材を使用して除去します。

髄腔内(ズイクウナイ)を整理してマイクロスコープで見てみました。うっすらと金属片のキラキラした感じが見えるでしょうか。

黄色い矢印はガッタパーチャポイントです。赤い矢印がファイルです。

ここまでで2時間は経過しています。

ファイルが確認できたので、ファイルの周りの壁を少しずつ慎重に広げていきます。

ファイルが浮き上がってきました。ここまでくれば除去できます。

浮き上がらせるまでさらに1時間以上かかりました。

ファイルが取れているのが分かります。

除去したファイルです。

 

 

Cさんはその後第二大臼歯の根管治療も行いました。こちらも保存治療で上手に行うことが出来ました。

2年後のレントゲン写真です。

第一大臼歯、第二大臼歯ともに根尖にあった黒い透過像が消失しています。骨が再生したという事です。

治療前のレントゲン写真と治療後のレントゲン写真を比べると、治癒しているのが良く分かります。

Cさん、治って本当に良かったですね。